懐かしい場所⑦ お正月

 前にも書いた通りお寺とクリスマスは無関係。そのぶんお年玉に対する期待は高まる一方。小学生の頃はお年玉を物で貰うことの方が多かった。世間で流行したドラゴンクエストというゲーム。みんな徹夜でそのソフトを買い求めた。
学校の先生も小学生が徹夜をしていないか見回りをしていた。その年のお年玉はドラゴンクエストだった。正確に言うとドラゴンクエスト3だった。父母がソフトを買ってきて、なおしている場所も知っていた。

 お正月にもらうはずのソフトだが、「あの棚の中にあるのだ」と思うとドキドキしてくる。
他のソフトで遊ぶものの、集中できない。「ちゃんと遊んでよ」というソフトの声にも「あ、ごめんぼーっとしてた」となった。棚の中のことで頭がいっぱいだ。恋をしている。

 衝動が理性を超えたある夜、こっそり棚を開けた。ピカピカに光った包装紙はほんのりインクの匂いがした。紙のリボンで綺麗に飾ってある包装紙を優しくはがすと、君があらわれた。

「遊ぼう」という君の呼びかけに「あたぼう」と僕は答えた。

新しい世界との出会いに夢中になった。そこにはバーチャルだのチャーチルだの存在しない。棚からこっそり抜け出した君は寒い冬の氷をも溶かすドラゴンだった。否ドラゴンクエストだった。

一度破った掟はもう掟とは呼べない。次の日から夜の何時間かドラクエをした。
レベルがあがるあがる。ドラクエ3には今までにはなかった画期的な機能がついている。

そう、セーブ機能。

いままでは長いパスワードをいれて冒険を続きから始めていたが、このセーブ機能は冒険の進行をコンピュータが記録してくれるのだ。

思い出はやはり思い出のままの方がよかったのか…

こうして迎えた正月。僕はドラクエを貰った。しかし、感動がない。
新品であるはずのドラクエを始めると続きからはじまるのだ。
夢を求めた結果、僕が得たものはリアルだった。この時に知った。常に新鮮であることなど不可能であるということ。

そして、我慢の量だけ喜びがあるということ。


人生に ついてりゃいいのに セーブ機能      釋慈顕
by bongu04200420 | 2007-12-29 14:15

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