栗の介御一代記 後編

その結果、ロンリーマロンにはなったけど、ロマン溢れるマロングラッセ的な喜びに満ちあふれていたのです。
ついにその日はやってきました。予想通りおばあさんが収穫に来ました。
「ほう、いい栗だね」栗の介を見ておばあさんが呟きます。
「その子に食べさせてあげよう」この言葉を聞いて栗の目にも涙。ツツ~っとイガに涙が浸みてきました。
「努力は実る」ありふれた言葉を思い起こさせるおばあさんの一言でした。
「さてさて湯がこうかね」おばあさんが鍋にお湯を沸かしています。ついに襲名の日です。
その子ちゃんの口に入った瞬間に、鈴木栗の介になるのです。しかし、そのままではあまりにも芸がない。
かねてから考えていた「鈴木亜栗」という名前を頂くことを本体様も了承してくださいました。
綺麗に湯がかれお皿に並べられました。
「クリキントンさんついにこの瞬間がやってきました」
「三栗先で湯がかれている旬君が言いました。おいおい、クリキントンさんじゃねーよ。クリントンさんだろ」
「え、そうなの」今まで呼び間違えていたことに気づき少し後悔しました。
しかし、気を取り直して精一杯のポーズをとります。

きら~ん

「おお、その子、この栗じゃ。この栗」
「え、おばあちゃんどれどれ」
「ほれ」おばあちゃんの指の先には栗の介がさされていました。
「本当だ」スッ!隣からぶるぶる震える手が伸びてきました。おじいちゃんが栗の介をつかみます。
「あ、やばい」
「ここは一家の主である私が御賞味いたそう」
ぐわ~ん。おじいちゃんの口が開き少しネバネバした唾液が栗の介を包み込もうとしたその時…

プルルルルルルル!

おじいちゃんの箸もとまります。
「もしもし」
その子ちゃんは携帯をとります。
「うん。え、今おやつ食べてるよ。え、え、何でもいいじゃない。だってださいんだもん。『栗』だよ。うん。マックうんわかった行く行く」
電話を切るなり
「おばあちゃんゴメン。行ってくるわ」
「待ちなさい。せっかく栗を湯がいたんだから一つでも食べていきなさい」
栗の介は絶望的な気持ちでしたが、最後の望みにかけておじいさんの箸から滑り落ちました。
コロ~ン。
「その子ちゃ~ん」
その子ちゃんの手が栗の皿に伸びてきます。栗の介は精一杯のびました。
「届け~」

シュ。

その子ちゃんは近くにあった旬君を右手でつかみ、パクッと口に入れて足早に部屋をでました。
栗の介は勢い余って皿からとびだしました。
「その子ちゃんの命になれなかった」
栗の介は青ざめました。
「おい、ばあさん。栗を落としてしもた。皿からとびでちょるわい」
「おやまあ、元気な栗ね」おばあさんの箸が栗の介に伸びたとき、おじいさんがいいました。
「落ちたのじゃなく綺麗なんを食べえ」
おばあさんはニッコリと
「胃の中にはいってしまえば一緒やけえ」と言いました。
栗の介の今生最後の言葉はこうでした。
「俺にとっては一緒じゃねえよ」

栗の介は見事、鈴木亜栗になったとさ

めでたしめでたし
by bongu04200420 | 2009-06-21 16:12 | 創作絵本

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