栗の介御一代記 前編

最低の創作絵本ができました。今日は前編です。

栗の介はだいぶ成熟してきました。
イガの鎧に包まれていますので、見た目にはわかりませんが、すごくいい体をしています。
人間界でいう「Tシャツを脱いだら以外と筋肉質」にあたるのかもしれません。
これも人、いやいや栗一倍努力した結果です
。朝早く起きて太陽と交渉して他の栗より少し質のいい光をもらっていました。
雨の日も雨雲に交渉して栄養価の高い水を吸収していました。他にも本体様にこびをうって栄養を多めに送ってもらうようお願いしていました。
他の栗達にはその理由がわかりませんでした。
なんの為に努力をするのか?丁度この年流行した「世界にひとつだけの栗」が後押しして「自らの命を輝かせればそれでいいではないか」という思想が蔓延していたのです。
1人だけ向上心にあふれた栗の介は「ロンリーウルフ」いやいや「ロンリ―マロン状態」です。

栗の介の本体様は鈴木家の庭に根を張っています。
まだ「小栗(おぐり)」の時、衝撃が走る出来事が起こったのです。
その子ちゃんという可憐な女の子が養女にやってきたのです。それまでおじいさんとおばあさんしか見たことのなかった栗の介は、びっ栗して目からイガを飛ばしてしまいました。
だんだん体が熱くなってきます。異変に気づいたおとなりのクリントンさんが栗の介に言います。
「大丈夫か?」
「あ、あ、身体が熱いんです」
「熱があるのか?うん。まてよ。」栗の介の症状を聞きながら、「家庭の栗ニック」という本を開いています。
「ははーん」
「なんですか?どうしたんですか?」
「おまえの病気は…これじゃな…恋じゃ」
「こ、こい」
「人間が他人に対して抱く情緒的で親密な関係を希求する感情で、また、その感情に基づいた一連の恋慕に満ちた態度や行動を伴うものである。」
「僕は栗ですが…」
「ほうほう、まれに種族を超えてこの感情が生じることもある。と書いてある」
「おまえは人間に恋をしたのじゃ。残念ながら恋が成就するということは栗いやいや無理だろう」
「…」この一連のやりとりを近くで聞いていた旬君が言いました。
「恋をするとき大事なことは何もいらないと本気で思えることさ」
見返りばかりもとめていた栗の介は少し恥ずかしい気持ちになり、ますます熱くなりました。
「それ以上あつくなるとはじけてしまうぞ」
クリントンさんの言葉を無視して旬君は続けました。
「いいかい。君の恋した相手が喜ぶことを考えればいいんだよ」
旬君の言葉は栗の介にある決意をおこさせます。
「よし、立派な栗になって食べてもらおう。そうすれば僕は彼女と一体となる。いわば彼女の命の一部となるのだ」

その夜の出来事です。いつになく強い風が吹き続けています。その風を受け続けた栗の介の腕はもう限界に近づいていました。
その時です。クリントンさんが一生懸命体を近づけ栗の介の代わりに風を受け続けているではありませんか。クリントンさんの白く太い腕がメキメキ音を立て始めます。
「いいか。栗の介。絶対に絶対に諦めるな。恋をする栗ってのは意外とかっこいいぜ」「く、クリキントンさん~」クリントンさんは渾身の声で何か叫びましたが、風にかき消されて何と言っているのかはっきり聞きとれませんでした。
ボト、地面に叩きつけられたクリントンさんはそれから間もなく息をひきとりました。
栗の介の身代わりになったのです。栗の介は泣き続けました。自分が恋をしたばかりに一栗の尊い命を奪ってしまった。泣いている栗の介に
「おい、泣くな。お前が泣いてもクリントンさんは喜ばない。むしろ悲しむだろう。お前が故クリントンさんの為にできることを考えたらどうだ」
栗の介はハッとしてグーとなり、心を入れかえて努力に努力を重ねたのです。

つづく
by bongu04200420 | 2009-06-20 22:06 | 創作絵本

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